トランス脂肪酸の種類

私たちが食品から摂取するトランス脂肪酸は、主に以下4つで生成されます。

①植物油など液体の油脂に部分水素添加する工程

②植物油等の精製工程での高温加熱

③油脂を高温加熱する調理工程

④反芻動物の第一胃内の微生物による代謝

①〜③は工業型トランス脂肪酸、④は天然トランス脂肪酸と呼ばれます。どちらも一種類のトランス脂肪酸ではなく、10種類近いトランス脂肪酸を含みますが、大きな違いは、主要なトランス脂肪酸が異なることです。

工業型の主要トランス脂肪酸はエライジン酸、天然はバクセン酸で、元となるシス型脂肪酸はどちらもオレイン酸です。

エライジン酸はLDLコレステロールを増やして心血管系疾患リスクを上げる働きが、一方のバクセン酸にはLDLコレステロールや中性脂肪を減らす働きが認められています。

同じオレイン酸から出来たトランス脂肪酸でも、ほんの小さな構造の違いでこんなに作用が違うとは興味深いですね。

工業型も天然も、エライジン酸とバクセン酸以外は共通するトランス脂肪酸がほとんどです。また、それらのトランス脂肪酸の作用は、実はまだ解明されていない部分が多いのです。このことから、全世界的に避けるべきと言われているトランス脂肪酸は、主にエライジン酸のことを指していると考えられます。

日本はまだ総トランス脂肪酸の表示義務もない現状ですが、トランス脂肪酸の総量表示では健康被害のないトランス脂肪酸も含まれてしまうので、将来的には各トランス脂肪酸の量が分かるようになることが望まれます。

この記事を書いた人

地曳 直子