命のしずく、植物オイル

前回、植物オイルのほとんどが種、もしくは仁を搾ったものだと書きました。植物はなぜ、種に脂質を溜めるのでしょうか?

植物は、発芽して双葉を伸ばし、太陽の光と自身の葉緑体でエネルギーをつくって成長していきます。光合成という仕組みです。

でも、光合成が出来るのは葉が出来てから。種の状態から最初の双葉を出すまでは、種の中のエネルギーだけで生きなくてはいけません。自由に動きまわれない植物は、種を小さくして風の力で遠くに飛ぶようにしたり、動物に丸呑みされて、動物が移動した先に糞として落とされるようにしたり、子孫を残すための工夫をしています。

双葉を出すためのエネルギーを蓄えつつ、種を出来るだけ小さくするためには、高エネルギーの脂質がちょうど良いのです。タンパク質と糖質が1gあたり4kcalなのに対して、脂質は9kcal。脂質を溜めることで、種をコンパクトにすることが出来ます。

種には、植物の知恵と、命が詰まっていて、その種を搾ったオイルは、まさに命のしずくのようなもの。 栄養的な観点だけでなく、植物の命としてオイルを捉えると、大切にいただきたくなりますね。

この記事を書いた人

地曳 直子