脂質を選ぶ植物たち

多くの植物は効率の良いエネルギー源である脂質を、種に蓄えます。

植物ごとに、蓄える脂質の種類は様々ですが、その組成は環境の影響を大きく受けます。例えば、寒い地域の植物は、多価不飽和脂肪酸のリノール酸やα-リノレン酸を含むものが多く、暑い地域の植物は飽和脂肪酸を多く含む傾向があります。

例えば、えごまの種を搾ったえごま油。 えごまは、晩秋に種ができ、大部分はその場に落下し、一部は鳥に食べられて遠くに運ばれ、糞となって落とされます。土に落ちた種は、そのまま冬を越し、翌年の5月頃に発芽します。種のまま、寒空の下でじっと発芽の時期を待つ間、種の中の脂質が固まってしまわないように、不飽和度が高く融点の低いα-リノレン酸を多く蓄えられると考えられています。

また、ココナッツやパームなど南国の植物は、強い紫外線や暑さで脂質が酸化されないように、酸化しにくい飽和脂肪酸を蓄えます。

自然環境に順応する植物たち、とても賢く逞しいですね。

この記事を書いた人

地曳 直子