トランス脂肪酸とは

「トランス脂肪酸は体に悪い」ということは、皆さん耳にしたことがあると思います。 「マーガリンやショートニング、またはそれらを使用した加工油脂にはトランス脂肪酸が含まれる」というのも、多くの方に知られるようになりました。

心血管系の疾患リスクが高まることから、欧米では10年近く前から、トランス脂肪酸を減らす取り組みが始まりました。その後、心血管系疾患だけでなく、アレルギーや糖尿病などのリスクも高めることが示され、近年ではアジア圏の国々でも、使用制限や表示義務などを設けています。

こんなにも世界中の国々で危険視されているトランス脂肪酸とは、一体どのようなものなのでしょうか?

私たちが食べている油脂は様々な種類の「脂肪酸」で構成されています。脂肪酸は分子構造上、飽和脂 肪酸と不飽和脂肪酸に分類できます。飽和脂肪酸は鎖状に繋がった炭素(C)に全て水素(H)が結合している飽和状態の脂肪酸で、常温で固体のものが多いです。

一方の不飽和脂肪酸は炭素(C)の周りに水素(H)がついていない場所(二重結合)のある脂肪酸です。不飽和脂肪酸は二重結合の位置によってオメガ3,5,6,7,9に分けられることは以前書きましたが、もう一つの分類として、「シス型」「トランス型」があります。

「シス」とは「同じ側の、こちら側に」という意味で、シス型脂肪酸とは二重結合を挟んだ炭素(C)に結合している水素(H)が同じ側についていることを表しています。オレイン酸やリノール酸、α-リノレン酸など、自然界に存在する不飽和脂肪酸のほとんどはシス型です。

一方トランス型脂肪酸の「トランス」とは、「向こう側の、横切って」という意味で、水素(H)が炭素(C)の二重結合を挟んでそれぞれ反対側についていることを表しています。

一般的にトランス脂肪酸というと一つの脂肪酸を表しているように思われがちですが、シス型脂肪酸が鎖長や二重結合の数や位置によって何種類もあるのと同様、トランス型の脂肪酸も何種類もあります。

次回は食品に含まれるトランス脂肪酸の種類について書きます。

この記事を書いた人

地曳 直子